行雲流水の如く

-Re-Start From 65 Years Old-

100円もらえませんか?

 先日、仕事が終わって家に帰る途中、前から歩いてきた男性に声をかけられた。

 「突然、すみません。わたしは知的障害があって、千葉県から療育手帳をもらっているものです。実は、今日は朝から何も食べていません。勝手なお願いで申し訳ないのですが、100円もらえませんか?」

 「!!!???」

 年齢は50代位、たどたどしい話し方から、確かに知的に障がいのある方なのだろうと言う事は、容易に想像できた。暑い日差しの中をタンクトップで歩き続けてきたらしく、両肩は真っ黒に日焼けしていて、一部日差しによる火傷のような跡が残っていた。

 突然の事だったので驚いたが、もう少し話を聴くことにした。

 彼の話によれば、以前は母親と一緒に暮らしていたのだが、その母親が亡くなってしまい、収入が途絶えてしまったのだと言う。今は、何とか生活保護に認可されてお金をもらえるようになったが、今まで滞納していたもの(おそらく、家賃のようなものだと思われる)を払ったら、ほとんどお金が無くなってしまったそうだ。

 「こうして色々な人にお願いしているのですが、話を聞いてくれる人も少なくて・・・。さっきまで300円くらい持っていたんですが、暑くて飲み物を買ってしまいました。」

  結局、私は彼に1000円札を渡すことにした。

「ありがとうございます!これで、ご飯が食べられます。」「がんばって下さい。」

そんなやりとりの後、彼とは逆の方向に歩き始めたのだが、何とも言えない思いを抱えながら家路につくことになった。

 「彼の言っていた事は、本当なのだろうか?」

 「自分は騙されたのではないか?」

 「いや、彼の話し方は、うそを言っているようには見えなかった。」

 「だとしたら、彼にとって本当に必要なことは1000円札をあげる事だったのだろうか。」

 「もっと他にできる事があったのではないか?」

 「いや、通りすがりのものが、出来るのはこれぐらいしかない。」等々

 一口に生活困窮者と言っても、その背景には様々な要因があるという。コロナで職を失い仕事がみつからない人、家族の介護のために働く事ができない人、社会に出るのが怖くて働けない人、DV避難したが子どもが幼くて仕事ができない人・・・等々

 日本の貧困率相対的貧困率というらしい)は、約15%で6人に1人と言う割合でこれはG7の中でワースト2位にあたるのだそうだ。

 また、生活困窮者の中でも、生活保護に認定される方はまだ良い方で、様々な理由で認定されないケース、生活保護という言葉のイメージから申請しないケース、あるいはそういった制度そのものを知らないケースなどもあるらしい。(生活保護制度とは別に、2015年より生活困窮者支援法が施行され、様々な支援が行われるようになっている。)

 今回の一件は、自分が住んでいる街にも、その日の食事に困っているような人がいるという事実を、「現実として」受け止める事になったし、「100円の重さ」をひしと感じる事にもなった。

<マイ ギャラリー>

樹木イラスト

<My Favourite Songs>


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  先日、仕事仲間と雑談していた時に話題になった曲。だれもがメロディーを口ずさめるのだが、曲名が分からなかった。調べてみると「夜が来る」というタイトルで、作曲は小林亜星。外国の曲だと思っていた者もいたくらいハイカラなメロディだった。当時(今も?)酒はあまり飲めない方だが、開高健のこのCMを見ると、今もウイスキーが飲みたくなる。


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 この曲と、記憶がごちゃまぜになっていた仲間もいた。1963年に発売されたビレッジ・ストンパーズのインストロメンタル。自分は、当時9歳という事になるが、なぜか妙に記憶に残っている。また、なぜか「ワシントン広場」というのはロシアにあるのだと思っていた。哀愁をおびた曲調が、そんなイメージを抱かせたのかも知れない。(実際は、アメリカのニューヨーク、グリニッジビレッジ)