前回に続いて、新型コロナウイルス感染症にまつわる「差別」の話題から。
先日、ドイツにおけるサッカー・ブンデスリーガの試合において、試合を観戦していた日本人団体客が試合途中に退去させられたという報道があった。理由は、「日本人だからコロナウイルスに感染している可能性がある。」ということだったそうだ。
この試合の該当チームであるライプツィヒは、その後「我々の日本人ゲストに対する解釈に誤りがあった。」として謝罪している。
実はこの手の話しは世界各地で起きていて、英ロンドンに留学する東アジア系の留学生が「コロナウイルスはいらない」という事で集団暴行を受けたとか、仏パリ郊外の日本食レストランが「出ていけウイルス」などの落書きをされて営業妨害を受けたという。
また、日本国内でも、先日集団感染が起きたクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で活動した医療関係者らが、下船後「ばい菌」扱いされたり、別のクルーズ船で帰国した方々が、「会合に来ないで」と拒絶されたりしたなどの風評被害を受けたという。
前回も書いたが、このような事が引き起こされる背景の多くは、コロナウイルスに対する目に見えない恐れや不安と、正しい情報の不足による無知や偏見があると思われる。
また、ヨーロッパ等でおきている差別事件の背景には、アジア人に対する差別感が底辺にあるという見方もある。
いずれにしても「中国国内では武漢出身者が差別され」「日本国内では中国人や韓国人が差別され」「ヨーロッパではアジア人が差別されている」という点に注目したい。つまり地域によって、差別される対象の人々はどんどん広くなっているらしいのだ。
このような事が起きてしまう背景の一つに、「早まった一般化」というものがあるという。これは、人が陥りやすい思考上の誤りで、「類推の危険」とも言うらしい。
たとえば「カラスは空を飛べる。ハトは空を飛べる。スズメは空を飛べる。したがって、全ての鳥は空を飛べる。」
これが間違いであることは誰にでも分かると思うが、要するに少ない事例だけで一般的な結論を導き出してしまうことである。
これを、今回の事例に当てはめてみると・・・
「中国でコロナウイルス感染者が出た。韓国でコロナウイルス感染者が出た。日本でコロナウイルス感染者が出た。したがって、アジア人は全員コロナウイルスに感染している。」
ということになる。
論理学という学問の中では初歩的・基本的知見なのだそうだが、われわれも日常生活の中で、「最近の若者は」「そもそも男性は」「東北県人は」「国会議員は」などの「早まった一般化」を行っていないだろうか?
The Tymes, "So Much In Love" 1963