パラリンピックが始まり、すでに1週間が経過した。残念ながらパラリンピックの出場選手に対する知識がほとんどないため、どの種目を応援しようというのが少ないのだが、実際に競技や競技に関わる人たちの姿を見ていると、とても大きなインパクトを感じたりもする。
最初に感じたのは開会式だった。片翼の飛行機に乗る少女が、周囲からの応援や励ましを受けながら、最後は一人で飛び立っていくという演出は、それなりに感銘を受けたが、自分が一番心に残ったのは、義手でバイオリンを弾く女性の姿だった。
バイオリニストとして紹介されていたが、実は彼女は現役の看護師だそうである。名前は、伊藤真波さん。自分は、バイオリンは全くの素人だが、少なくともバイオリンを弾きこなすには、利き手の手首の柔らかな動きが欠かせないはずである。テレビで見る限り、彼女の右肩の動きに呼応する様に、義手が絶妙な動きで演奏をカバーしていたことに驚いた。伊藤さんは20歳の時に交通事故で右腕を失ったが、看護師としての夢を叶えるとともに、パラリンピックの水泳選手として、バイオリニストとして、そして一人の母として子育てを行っているそうである。
次は、14歳の水泳選手の山田美幸さん。彼女は、生まれつき両腕がなく、脚にも障害を持つ背泳ぎの選手である。通常、両腕のない方はドルフィンキックの裏がえしのような状態で泳ぐことが多いそうだが、彼女の泳ぎ方は独特のもので、脚を後ろに交互に蹴りだすような形で推進力を得ている。クロールや背泳ぎの場合、半分以上は腕の力で泳ぐことが多いが、並外れた脚力と足首の柔軟さがあるのだろう。聞くところによると、体にくくりつけたベルトで3キロほどある排水溝のふたを引きながら練習したそうである。
最後は、いくつかの番組でも紹介されていた盲目のカメラマン、ジョアン・マイアさん。28歳の時に病気で視力を失い、今は近くで見て色と輪郭を判別するのがやっという状況だそうだ。目がほとんど見えないのに写真をどうやって撮るんだろう?
だれしもが思う疑問だが、選手の動きや息づかいをとらえシャッターを押しているそうだ。もちろん、編集や現像等には他の人のサポートが必要となるが、自分の認識したもの、感じたことなどを自分なりの見え方として写真を撮り続けている。
パラリンピックでは、選手たちはもちろん、選手を取り巻く多くの人たちが、活躍している。主役だけではなく、わき役として、サポート役としても、たくさんの人たちが、この世界的なイベントを支えていることを強く感じた。
障害を持つということがどういう事なのか、どんな人生を歩み、これからどこへ向かおうとしているのか、テレビを観ているだけの私たちには想像することしかできないが、障害の有無に関わらず、自身に与えられた運命(さだめ)を全うしようとする姿は、とてもまぶしく感じたりもする。
そのほんの少しの想像力を大切にしたい。
<マイ ギャラリー>
www.youtube.com Andre Ganion 「めぐり逢い」